意味 |
風景を論じたもの。風景そのものが多面性をもつので、風景論も実に多彩である。いままでにも多方面からの風景論が発表されている。古典的な自然風景を対象にしたものでは、志賀重昂「日本風景論」(1894)、小島烏水(こじまうすい)「日本山水論」(1905)、上原敬二「日本風景美論」(l943)、これを構造的に追求した樋口忠彦「景観の構造一一ラ ンドスケープとしての日本の空間」(1975)、「日本の景観」(1981)、計画思想として風景の原点をみつめ、在り方やつくり方を論じた中村良夫「風景学入門」(1982)、田園の風景を対象にその国民的原風景性を論じた勝原文夫「農の美学」(1979)や東京郊外に限って論じた川添登「東京の原風景」(1979)、さらに都市における風景や建築や町並みの在り方に言及する向井正也「日本建築・風景論」(1979)、芦原義信「街並みの美学」(1979、続1983)。このほか、奥野健男「文学における原風景」(1972)や田中日佐夫「巨匠たちの原風景」(1984)のように心象風景レベルの原風景論も盛んである。風景という概念を援用することによって、人間にとっての自然とか環境とか、時には都市とか田園とか、さらには原風景や歴史風景などが、いかなる意味をもつかを考察することが、風景論の究極目的となっている。 |