意味 |
大規模土地造成時に、掘削される肥沃な表土を植栽地土壌とするために仮置きし、蓄えておくこと。なお、表土を植栽地土壌として利用することを表土利用といい、一時的に仮置きしてある表土を植栽のために敷き戻すことを表土復元という。土壌層位A層に相当する表土の厚さは一様ではなく、A層との漸位層すなわちB層の一部を含めた土壌を表土として扱う場合が多い。土地造成の既往の施工法は土木機械類で施工しやすく手間のかからない方法で実施されるため、表土が完全に埋められたり、下層土と混合されたりする。この方法で造成された土地は腐植質が少なく、しかもプルドーザー等の重機で下層土まで締め固められているため、植物生育基盤としては極めて不適な状態となる。土地造成後の植栽を考慮すれば、表土を保全し利用することは既往の施工法の欠点をなくし、植栽基盤整備の手法として極めて有効な措置といえる。日本では1975(昭和50)年から「都市計画法」第33条によって、1.0ha以上の開発行為にあたって、また高さ1.0mの切土・盛土が100m2以上の面積にわたって土地に変化を与える場合、表土保全の措置が義務付けられるようになった。諸外国では日本よりも以前から取り組まれており、建設工事等で掘削される表土の再利用・保存が義務づけられる西ドイツの「連邦建設法」や表土復元を実施した後に残った表土を蓄えることのできるイギリスのソイルバンクシステム(soilbank system)等がある。日本で実施された先駆的な例としては住宅・都市整備公団の多摩ニュータウン、神奈川県住宅供給公社の若葉台団地等がある。表土保全は、(1)表土採取対象地の既略調査と表土の土壌分析を行う。効率的な表土採取を実施するために、また、いかなる質の表土であるかを把握するために地形、表土の分布厚、さらに表土の理化学性についてあらかじめ調査する。(2)表土採取を、一般にブルドーザーや俗称面取りと呼ばれる機械の活用によって行う。表土が厚く堆積する場合はショベル系掘削機械を利用し、表土が薄い場合はブルドーザーによる?離を行うなど、表土厚によって使用機械が区別されたりする。ほかにはのり面に堆積する表土を階段状に採取する段切採取等の方法がある、(3)一度集められた表土を後の工事に支障とならない場所に仮置きし(表土仮置き)、表土中の養分が雨水で流失しないようにシートで覆ったり、仮置きする地面に排水溝・排水勾配を設けたり、また、盛土したその上面にも排水勾配を設けるなどの配慮が必要である。表土仮置きは通常高さ2.0m内外で1:1.5程度の傾斜で盛るという手順で実施される。植栽のために仮置きされた表土を敷き戻す表土復元はこの次の段階で行われる。この場合、粗造成面と表土を耕起し現地盤となじませた後、徐々に盛土し仕上げ造成面まで敷き戻すことが要点となる。 |