意味 |
一定方向に軸線(axis)をもった風景およびその構成手法。見通し、通景、見通し景と訳される。元来西欧において発達した造園的景観構成手法の一つ。一般に森林を直線状に伐開したり並木状の植裁により見通し(view)を額縁状に区切り、見通し線(vistaline)を構成し、見通す方向に複線の誘導を図ったもの。軸線状のビスタを構成するには、直線的でかつ額縁効果があり、視線をリズミカルに奥行方向へ誘導する並木が最も効果がある。このほかにもアレーのような樹林地の中に開かれた帯状空間を設けたり、列状の彫刻やカナール、地形変化や建物が考えられ、これが額縁(enframement)を構成する。通常ビスタによって構成された景の焦点(focal point)には、アイストップ(eyestop)となる山岳、記念的建造物、庭園装飾物が置かれる。逆にこれらのランドマーク(landmark)となる景観構成物を演出するために、ビスタの手法が用いられるともいえる。効果としては、(1)ランドマークの強調、(2)荘厳さの付与、(3)広大な敷地の有機的結合、(4)自然風景の人工的景観構成による取込み、などがある。西洋の庭園で用いられた例としてはヴェルサイユ宮苑やキューガーデンのパゴダへのビスタがある。わが国では新宿御苑や神宮外苑絵画館前のイチョウ並木による構成がある。都市の道路による構成としては、バロック以来西欧の都市空間構成技法として多用され、パリの都市計画に見られるものがその代表である。以上整形的、技法的に用いられるビスタの意味のほかに、vista、vistasとして自然風な風景の中の見通し線を意味することもあり、欧米の書に見られる日本庭園の解説中、「いくつかのvistasが構成されている」という表現はこれに当たる。 |