意味 |
観賞を目的と した水の流 れ。計画にあたっては敷地の高低を調査し、勾配の急な所では渓流様に、平たんな所では野川様にし、その程度に応じて蛇行させる。また前者は稜の強い石を用い、後者は丸みのある石を用いるなど、自然の景に合った配慮が必要。また流れの長い場合は、水源・上流・中流・下流・河口の境目に灌木・湿性植物、大型の石組を配して両景のつなぎとする。そして水面が十分観賞できるよう岸の手前には背の高い庭石や灌木等を設けないよう注意する。流れを蛇行させる場合は、水流の当たる所がえぐられて深くなり、反対側は堆積して浅瀬となり白州を生じる。そのため水の勢いよく当たる部分には「回(めぐ)り石」という護岸を兼ね風格ある大石を配し、「脇石」、「詰石」を配石する。流れの曲がる側の崩れやすい部分近くに家屋を置くのは造園古書「作庭記」では禁じている。「洲浜」は流れの水勢弱く、砂利や砂などの沈殿した所で砂嘴(さし)状のものもある。流れの観賞方向は、水面の横側よりも向かってくる方が水紋も美しく趣が深い。小さな落差を作る「瀬落し」も見栄えがする。わが国では平安時代から順流として、東から建物下を通り南西に流れるを吉とし、陰である北から陽である南に向かうのは和合の意味からこれも吉、凶の逆琉は西から東へとしている。しかし高野山の例のごとく仏教東漸の相を示すものとして逆流必ずしも凶でないと「作庭記」に記されている。敷地の西側が高いと庭園内が早く日がかげるのを厭(いと)うからであろう。谷川様は山合いから流れが左右に突き当り水しぶきを見せながら落ちる風情とし、野川様には瀬を作るため流れを狭めて水流を勢いづける「横石」、その間にあって水を落とし、水を盛り上げる「水越し石」、水落ちの下で水をはね返す「水受け石」、水を分けて勢いづける「水分け石」、流れの底に見える「底石」などがある。いずれも根入れを深く据え付け、岸の所々には乱杭・しがらみ護岸・洲浜・草止め護岸などで変化を付ける。両岸にある景石は観賞位置から重ならないよう注意したい。流れに関する石組は、建物と関係する所、築山の鼻をめぐる所、池に入る所が重点部分で少なめの方が効果的。流れの局部を修景するための添え物に、僧都(そうず)、竹籠に玉石を詰めた護岸用の蛇籠・水車・流れつくばい・井筒・庭橋・沢飛びや沢渡りなどがある。水漏れを防ぐには、水位までコンクリートの側壁を立ち上げるとよい。また、流れに変化をつけるには水底に様々な工夫を凝らす。流れの底には玉石・五郎太(ごろた)・砂利をコンクリート底に圧着させて凹凸をつけ、水深を浅く流速を速くすると水面上の水紋が楽しめる。重量物を載せたり、あるいは軟弱地盤の場合には底に配筋する。仕上げ面には、コンクリートやモルタルが直接目に触れないよう、色モルタルや小石を埋め込むなどの配慮が必要。流形は地形に応じ、幅は水量の多少で決められるが、広過ぎない方が有利。勾配は百分の三程度でせせらぎが、百分の一程度で緩流となる。ー般に流れの広まった所は浅くし、狭まった所では深くする。また、 計画前に補給水の調査が必要。補給水のない場合は水道を用いることになるから、水漏れのないコンクリー ト袋打ち工法が有利である。施工は図面に倣い地縄を張り、地杭を打って位置を確定、次に水位を定める基準点を定め、要所に設けた遣形杭に勾配が計算された水面高を記入、その位置へ水貫を設け、互いに水糸を張り、これを基準に構造図に従って造成する。水を循環させるには、下流端末に一定量の水槽を設け、上流の吐出口へポンプで押し上げる。流量の調整は水栓によって行い、その位置は、人目の触れない場所とする。 |