意味 |
人間と自然、人間と環境の関係についての見方・考え方、あるいは人物や作品を通しての、その時代の造園思想の流れ(Geistesgeschichte)。自然観、庭園観、空間観などの流れとみることもできる。現時点で造園思潮の総説的業績はないが、いろいろなアプローチが試みられている。例えば、(1)自然は人間が生きるために存在する、というキリスト教的自然観と、人間も自然の一部で自然の山水にも仏性(ぶっしょう)をみる、という仏教的自然観を基調に、人間の対自然的態度の相違に注目した展開をするもの、(2)作庭活動での基本態度の流れを、「自然に従う」から「自然を造形する」へと理解する方向で展開するもの(田中正大、1967)(3)空間の開放性に注目して、「視覚的制限区域・社会的制限地域・建築的影響区域・視点群・造景・借景・通景線」を指標に展開するもの(石川格、1978)、あるいは「造形性・芸術性本位の時代から、造形性・芸術性・社会性の時代、そして科学性・自然性・社会性・造形性・芸術性など正にトータルランドスケープの時代へ」、文字で言えばGardening、Landscape Gardening、Landscape Architectureと段階的に大きく変化してきたととらえる展開(進士五十八、1982)などがある。もちろん、ピュクラームスカウ(Puckler Muskau、1785?1871、長岡行夫訳「造園指針」1932)や谷川徹三などによる哲学的造園論や造園美学といったものでは、個別のテーマを詳細に論じている。特、 近代造園学の発祥として、あるいは対自然態度の基本問題を内包して、議論の多いイギリス風景式造園の研究(江山正美、中村ーら)については、造園思潮面からの研究が少くない。「庭のイングランド」(川崎寿彦、名古屋大学出版会、1983)などはその好例。思潮史と技術史の両立が造園史を大成する基本である。 |