意味 |
一般には、庭園や公園などをつくること、あるいは作られたもの、の意。しかし、その対象空間の拡大および技術的基盤が土地・自然の合理的、風致的取扱いにあったため、居住地の敷地計画はもとより、都市地域全般の緑地系統をはじめとする土地利用計画、さらには田園地域から自然地域の国立公園や観光地などの風景地計画までを体系的に整序する科学技術へと発展した。このように広範な領域を対象とする環境デザインの造園を、ニューヨークのセントラルパーク設計者オルムステッド(F.L.Olmsted)の提唱による新しい職能「ランドスケープアーキテクチュア」とし、これを特に「近代造園」と呼ぶこともある。それ以前には、「ランドスケープガーデニング(風致造園)」、さらにそれ以前は「ガーデニング(作庭・造庭・庭造)」と呼ばれ、生活空間を垣などで囲み安全性を確保し、その中に植物や水や小動物を導入して美しく快適で自然性を感じさせる生活芸術として古くから存在した。語源的にも、このことは説明される。例えば、園(その)は果実のなる樹木が、柵で囲まれた土地の中に植わっている姿であるし、庭(てい)は中国式建築四合院の中庭のように周囲を建物で囲まれ舗装された場所、屋前の空間を意味する。また、ガーデン(garden)はヘブライ語のgan(囲みの意)とeden(楽しみ・喜びの意)の合成語とされ、守られていて安全で、快適な空間の意味合いが包含されている。言葉にこめられた意味は、具体的に庭園の形にも表現され、古代エジプトの庭園やエデンの園の描写に、強い日射から身を守る緑陰樹や食べられる果樹、生きるのに不可欠の清らかな水や魚や鳥などがすでに見られる。同様のことが仏教における極楽浄土、その地上への具現としての浄土式庭園にも見ることができることから、造園は古来より人間にとって望まれる理想的な空間世界の創造を目指してきたものと理解することができる。高密度で人口環境下の現代都市社会で、この目標を達成するために、従来より造園に求められてきた(1)合理性や機能性、(2)美観性や景観性のほかに、(3)生態系の保全や自然との均衡、(4)時代や人々の要請や周辺環境との調和など社会性、(5)感動や充実感付与など精神性への配慮を図るようになってきた。こうして現在「造園は、人工と自然の調和共存を図りながら、人間の多様な要求と満足を満たすために、主に緑を活用して、土地・自然・風景、すなわち都市地域から田園地域、自然地域にわたる各種環境空間すなわち造園空間を保全し、創造し、秩序づける計画実現のための総合技術体系といえる」ような実体を整えるにいたった。造園行為の特徴は、保護的側面と造成的側面の双方を含んでいて、造園学の研究にあっては、土地・自然の科学的分析に基づく評価分級に係る分野と、人々や社会の求める要求やその基底に流れる背景や、創造的意志と効果的表現に係る分野の二方面、すなわち単純化して言えば科学と芸術の両側面が認められるといえよう。なお、広義の造園行政は文化財や観光ないし環境問題・都市問題のすべてに及ぶが、中心は環境庁の主管である自然保護・自然公園行政と、建設省が主管する都市緑地・都市公園行政である。また造園関連の団体として、日本道路公団、住宅・都市整備公団や、(社)日本公園緑地協会、(財)国立公園協会、(財)日本自然保護協会、(社)日本観光協会、(財)日本緑化センター、(財)都市緑化基金、(社)道路緑化保全協会、(財)公園緑地管理財団、(財)日本造園修景協会、(社)日本庭園協会、(財)観光資源保護財団などがある。造園業界は主に、(社)日本造園コンサルタント協会に結集する計画・設計業界、日本造園建設業協会や(社)日本造園組合連合会などに結集する施工・管理業界、それに(社)日本植木協会や日本公園施設協会などに結集する植物材料の生産流通や施設業界に区分できる。 |