意味 |
裸地あるいは植被されている土地に、時間の経過とともに種々の植物が侵入、繁茂し、次第に種の組成を変え、優占種の異なる様々な群落に移り変わっていく現象。造園空間でいえば、高速道路等の緑化用植物で緑化されたのり面が、時間の経過とともにヨモギ・ススキ、あるいはアカマツなどの優占する植物群落に移り変わっていく現象が身近な例といえる。遷移の始まりから終極までの段階を遷移系列といい、その段階は立地条件によっても異なる。わが国においては、通常、裸地1年生草本の草原、多年生草本の草原、陽樹林、陰樹林という段階を示し、自然状態においては高山、海岸部を除く大半の土地において、遷移の結果、終極的には森林が成立するといわれる。この終極の状態を極相と呼ぶ。遷移は、先行する植物群落の環境形成作用によって改変された環境条件に新たな適合種が侵入、繁茂する、あるいは植物相互間の競争の結果、次第に草丈・樹高が高く、寿命の長いものが優占種となり、他の植物を駆逐することなどが原因で起きる現象といわれる。遷移は、遷移の始まる場所の立地・環境条件等の違いによって種々に区別される。主なものを挙げると、まず、立地条件の違いにより、火山の溶岩流の上など、全く生育基盤となる土壌が形成されていない場所に始まる遷移を一次遷移、何らかの原因によって植生が失われた後、すなわち生育基盤となる土壌、植物の種子等が存在する場所に始まる遷移を二次遷移と呼ぶ。また、溶岩流などの乾性環境で始まる遷移を乾性遷移、池沼などの陸化した場所から始まる遷移を湿性遷移と呼ぶ。次に、遷移の進行状態により、自然状態で、通常見られる草本群落から、次第に森林群落に向かう遷移を進行遷移あるいは正常遷移と呼び、中世ヨーロッパの森林破壊の主因のように、森林群落が過度の林内放牧により次第に草原・荒地化していくことを退行遷移と呼ぶ。また、東北地方のシバ草原のように、放牧が継続的に行われることによって、他の植物が生育、繁茂することができず、すなわち遷移が進行せずにシバ草原という状態で停帯してしまうことを偏向遷移と呼ぶ。道路のり面等がクズで被覆されると、他の植物の生育が被圧され、遷移が停滞してしまうこともその一例である。遷移の始まりから終局段階の極相の森林に達するまでの時間は、気候条件等によっても一様でなく、また、生育基盤となる土壌の有無、状態によっても著しく異なるが、わが国では二次遷移でおおむね200年、一次遷移でおおむね1000年内外とみられている。遷移は植生連続あるいは更行ともいわれ、植物生態学の重要概念であり、造園の分野においても、植生復元、のり面緑化、植生管理など多方面において、その実行にあたり遷移の知識が必要になっている。近年、「サクセッション」と呼ぶ場合が多い。 |