意味 |
イスラム教(回教)に影響を受けた時代のスペイン庭園の様式。パティオ式。現在のスペイン国民の大部分はカトリック教徒でイスラム教徒ムスリムは皆無といわれるが、スペイン南部アンダルシア地方には現在もイスラム風の庭園が生きている。スペイン式は、ペルシア・イスラム、インド・イスラム式と共に、スペイン・イスラム式またはスペイン・サラセン式と呼ばれ、その原型はペルシアの造園にある。不毛の高原地形、厳寒酷暑の気候、外敵の多い政情を背景として、内庭型の形式をとるペルシアの庭園は、古代ペルシア人の信仰したゾロアスター教の「天国は金色に輝く苑路、果樹と花を満たしたダイヤモンドと真珠造りの園亭のあるひとつながりの大庭園」という思想に影響を受けて、貯水池・カナール・噴水・果樹・花・タイル舗装などを要素とする特徴的な庭園を生み出した。ゾロアスター教の聖典「アヴェスタ」の描く理想境は、周囲を壁で囲み、その中に水を流し、この地方原産のブラックパイン(常緑針葉樹)を壁の内側に密植して緑の園を形成するようになっていて、ちょうどスペインのパティオ式庭園そのものとなっている。雨の少ない、そして暑いスペインでは、少ない水を効果的に演出する技法が発達した。アランプラ宮苑の「獅子のパティオ」で代表される噴水や、「アルベルカ(壁にとり囲まれた池の意)のパティオ」で代表される水面に美しい塔や柱の影を映し涼味を与える技法はその典型である。グラナダのアランブラ宮殿とへネラリーフェ宮苑、セビリアのアルカサール宮苑が代表的庭園。→パティオ |