造園用語集

植生復元


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植生復元

項目 植生復元 / しょくせいふくげん
英語 -
意味 何らかの原因によって破壊された植生を人為あるいは自然力によって元の状態に復元すること。植生の破壊、その復元が問題となるのは、主として自然性の高い植生域である。具体例を示すと、観光道路建設に伴う亜高山帯の森林植生域の破壊跡地、鉱山の煙害により低山帯の森林植生域に生じた禿赭地、観光客・登山者の踏圧により高層湿原・雪国草原の一部に生じた裸地などが植生復元の対象となる。復元方法としては、遷移あるいは天然更新などの自然力による方法と、播種、あるいは株・苗木の植栽などの人為による方法とがある。復元対象地の植生の種類、立地条件の違い、破壊の程度などによって復元方法が異なる。自然力による方法は破壊の程度が軽く、規模も小面積のときにのみ適用できる。破壊の程度が甚大で環境条件も厳しい場所においては、ある段階までは人為によって植生を復元し、その後は自然力にゆだねるなどの方法を採る。一例を挙げれば、観光道路建設に伴う亜高山帯のシラビソ、コメツガなどの極相林の破壊跡地では立地条件も貧化しているので、一気に極相林の再生は困難であるため、とりあえず人為によって乾燥・貧養なる立地条件に耐え、しかも急速な生長が望めるダケカンバなどの陽樹林の復元を図り、その後は自然の遷移現象にゆだね、やがてはシラビソ・コメツガの森林の復元を図ることなどが考えられる。また、植生破壊の程度の著しい場所においては通常、植生の生育基盤も損なわれている場所が多いので、植生導入に先立ち、生育基盤の整備あるいは植生破壊をもたらした要因の除去が必要となる。すなわち、亜高山帯域の観光道路沿いの植生破壊箇所などにおいては、破壊の直接的原因となった工事による捨て土や飛び石の除去がまず必要となり、次に土砂の流失や浸食を防止するための手当を施し、さらに場合によっては客土・土壌改良を行い、生育基盤の整備を行う。以上のように大規模な植生破壊地においては生育基盤の整備を周到に行うか否かが植生復元の成否の鍵となるといっても過言ではない。低山帯の森林植生域、あるいは高層湿原・雪国草原などにおいても植生復元を図る場合には生育基盤の整備がまず第ーで、次に復元の目標とする構成種の苗木・株を植栽して植生の復元を図る。この場合も先の亜高山帯植生域の場合でも植生復元に関しては、復元目標とする植生の健全生育を助長し、復元を確実にするためには保護・管理対策の実施も極めて重要となる。例えば、苗木を植栽した場合には、雑草に被圧されないための除草作業が必要となる。高層湿原・雪国草原においては植栽した植物の株間に乾燥防止、雑草の侵入防止の敷きわらなどによるマルチングを施すことも有効となる。以上述べてきたことからいえることは、植生復元についても、のり面緑化と同様に、その工法としては基礎工、植生工、保護・管理工が考えられ、これらが一体となって実施されることが植生復元を確実に行うための要件となる。なお、植生復元に使用する植物については、草本・木本を問わず、在来植物を用いることが原則であるが、植物の生育環境としては極めて劣悪で、しかも土壌浸食防止など応急的な緑化が必要なときには、やせ地に耐え、発芽率が高く、生育旺盛な外国産芝草を導入したり、肥料効果を高めるために肥料木を用いることもある。在来植物の多くは総じて発芽率が低いなどの欠点もある。植生復元の全く異なる手法として、周辺植生域の表土を採取し、復元予定地に敷き並べ、表土中に含まれる埋土種子の発芽、生長によって植生の復元を図る表土のまき出しという方法もある。
五十音順
あ い う え お
か き く け こ
さ し す せ そ
た ち つ て と
な に ぬ ね の
は ひ ふ へ ほ
ま み む め も
や ゆ よ
ら り る れ ろ
わ