意味 |
一定地域の植物群落の分布状態、広がりを描いた地図。植生図は植生のとらえ方、作成の方法、図化しようとする植生あるいは縮尺などによっていろいろな種類がある。一般に植生図という場合には、現存植生図を指すことが多い。現存植生図は図化する対象が現存している植生であることから、最も容易に厳密な植生図を作成することが可能である。さらに現存植生を基礎として、ある立地が潜在的にどのような自然植生を支え得る能力があるかを理論的に推定し、その植生の具体的な配分状態を図化したものが、潜在自然植生図である。また現在の植生が成立する以前、すなわち人間の影響が加わる以前の自然植生を、理論的に推定し具体的な配分状態を図化したものが原植生復原図である。植生図は植物群落の決定方法によっても、次のような種類に分けられる。植生の相観に基づいた相観植生図、植生の生活形を基礎とした群系植生図、植生の優占種に基づいた基群集植生図、群落構成種の中から標徴種を見いだし、その種組成を基礎とした群集植生図などがある。植生図は図化の目的に応じて、いろいろな縮尺で作成されるが、縮尺の大きさによっても次のような種類がある。小縮尺植生図と呼ばれ、全世界的規模あるいは大陸的規模の植生を図化するために、相観や群系などを植生配分の単位とした1/100万あるいはそれ以上の小縮尺で図示されるもの。中縮尺植生図と呼ばれ、全日本的規模や都道府県規模、一地方のやや広い地域などの植生を図化するために相観・群系・優占種などに基づいて1/10万から1/100万の縮尺で図示されるもの。大縮尺植生図と呼ばれ、市町村地域などの植生を図化するには、優占種や群集などに基づき1/10万、あるいはそれ以下の縮尺で図示されるもの。また、大縮尺植生図には、ある特定の目的で、群集以下のすべての植生単位を基準として、個々の草本や木本の位置、分布について極めて大縮尺で細密に図化した細密植生図などもある。わが国で公刊された主な植生図には、環境庁が植物社会学的手法にのっとり植物群落を配分して図化した現存植生図、文化庁が各都道府県全域について、植生の相観に基づいて図化した現存植生図などがある。さらに市町村や自然公園の特定地などについても各種の植生図が作成されている。これらの所在については宮脇昭・奥田重俊による「日本植生便覧」(1978)に一括されている。植生図の作成目的は様々であるが、植生の分類・動態・分布、あるいは植生と立地要因との関係など植生の基礎的研究面での利用など隣接分野における応用的研究面での利用を目的としたものや地理学・農学・林学など隣接分野における応用的研究面を目的としたものもある。特に造園の分野における植生図は、自然環境の保全、復元などの分野において、また国土計画、地域開発、土地利用計画、農村計画、都市計画、公園計画などにおける自然環境の解析資料としても利用されている。植生図の作成にあたり、色彩や凡例に関する統ーした見解は示されていないが、1973年ユネスコが全世界の植生図化を目的に統ーした色彩、凡例、記号を発表している。図化の際、凡例が多数の場合には色彩による識別が困難となることがあり、記号・模様との併用が効果的である。 |