意味 |
庭園における外部景観の眺望形式の一種。眺望行為は、古今東西いずれの庭園、さらにはあらゆる造園空間にあっても活用される基本的な演出技法である。したがって造園計画では、(1)眺められるもの(眺望の対象または対象場、眺望景観)、(2)眺めるところ(視点または視点場、ビューポイント)、(3)効果的な見せ方(景観操作)を、どのように組み合わせるかがポイントとなる。借景は単なる背景とは違う。借景される塔や山など園外景観の主対象の位置や見え方を大前提として庭園構成が構想される。このとき、庭園構成における園外景観の比重によって狭義の借景が定義される。借景の比重が最大の場合は、「借景」即「主景」の、いわゆる本格的な「借景庭園」と呼ばれるものになる。この場合、主景がもし消滅してしまえば庭園としての生命も半減してしまう。特に日本式庭園の特質を言い表すキーワードとして国際的に指摘される場合の借景は、「庭は借りてきた景を引き立たせるための前景にすぎぬ、というまで自己を滅却した状態」をいうほどに、借景が即主景となっていなければならない。例えば、遠景の青山を借景とするために、庭園内は白砂を敷くだけにするというのが、その典型である。厳密な意味で(狭義の)借景が説明されるために「借景の条件」や「分類」が研究されている。上原敬二「日本式庭園」(1962)による借景の条件は、(1)借景対象物、(2)自己の設計地、(3)中間の空間の三つ。伊藤ていじ「借景と坪庭」(1965)の条件は、(1)屋敷内庭園、(2)借景対象、(3)見切り、(4)前庭と遠景をつなぐ要素の四つ。中国の造園書「園冶(明の計成)」(1931)の巻三では、「借景」が一章独立して設けられ、重視されているが、借景対象への距離によって(1)遠借と(2)鄭借、それに、対象を望む高さによって、(3)仰借と(4)俯借に、それぞれ分類されている。なお、庭園と借景の間は、通常コンケイブ地形(concave(くぼ地))が効果的とされる。 |