意味 |
芝生の植栽材料として用いられる植物。地被植物のうち、観賞利用のほか特に運動・遊戯・休養の場に供される植物で、大面積を単一種で構成する場合が多い。庭園等の観賞用芝生のほか、公園・緑地の芝生広場、ゴルフ場、競技場フィールド、野球場、サッカ一場、ラグビー場、遊園地のレクリエーション広場等に植栽され、短く頻繁に刈り込まれるうえ、激しい踏圧を受けることになる。したがって芝生用植物としての適合条件を挙げれば、(1)多年草で草丈が低く、あるいは刈込みによって草丈を0.5?5cmの範囲に保つことが容易であるもの、(2)茎葉は適度に柔らかく、葉は細密で縟密に地表面を覆い、全体的感じが美しいもの、(3)再生・繁殖力が旺盛で、踏圧・刈込み等の人為的な行為、病虫害等の生物的条件に対して抵抗力があり、また土壌・気象等の悪影響に対しても抵抗性があるもの、(4)播種・株分け・張付け等の方法で造成が容易であり、なるべく匍匐(ほふく)茎を有するもの、(5)人畜無害はもちろん、悪臭や刺(とげ)、乳汁分泌のないもの、等が挙げられる。これらの条件を満たすものとして、イネ科の草本、特にウシノケグサ亜族(ウシノケグサ属・ホソムギ属・イチゴツナギ属),ヌカボ族(コヌカグサ属)、ヒゲシバ族(ギョウギシバ属)、シバ族(シバ属)のものが該当する。これらイネ科の草本が芝生の植栽材料として最適となった理由は、その形態・性質が極めて永い年代にわたる草食動物との共存関係において生き残るために、動物に食われても生存し続けるような構造と生活様式を発達させたためと考えられる。ゴルフもその初期において、まだローンモアが開発されなかったころは、刈込みにモアの代用として兎や羊をゴルフ場に密に放牧して芝草を短く食わせたという記録もある。直立茎の節間が短くなっていることは、葉は食われてても茎ごと全部は食われにくいことを意味し、例えばシバの直立茎の下部は7?9枚の鱗片(りんぺん)や萄(ほう)に包まれ、その上部に3?4枚の通常葉をもち、1本の直立茎の全節数は12節前後となる。仮に茎が食われてもすぐに再生できるように分蘖(ぶんけつ)能力があり、シバ等の成長点は地表すれすれに保護されているので生育伸長が損なわれることはない。これは芝生とした場合、短い頻繁な刈込みに耐えることを意味し、また茎の基部が葉螺(ようしょう)・鱗片(りんぺん)・苞(ほう)等によって保護され、根も密生した髭根(ひげね)をよく伸ばして厚く、地下茎等が発達したことは、草食動物の踏みつけによる傷害を受けにくいように適応したものであろう。シバ等の匍匐(ほふく)茎の各節は、短縮した3節が集合したものであり、ここより3?4本の根を出す。また匍匐茎の各節は左右に2芽を有し1芽が損なわれたとき他が代わって伸長する。この直立茎も基部の節より不定芽・不定根を出す。不定芽は上部においても盛んで、よく分枝し、不定根も出す。これは目土への発根に都合がよく、芝生で行う各種スポーツ等の踏圧による被害や、また短いたびたびの刈込みに耐えることを意味し、運動用芝生としてのターフ(turf)の状態を維持するのに好適である。植物群落においては、密生すると光は下葉にいくほど上葉に遮られて弱まる。葉の光合成の速度は光の強さに関係するので、葉面積の増加に伴って光合成による生産は増加してくるが、一定の限度をこすと呼吸による消費にくわれてくる。つまり群落内には生産量を最大にする最適葉面積があり、アカザのような水平に近い葉をつけるものは、1m2当り4〜5m2の葉面積、イネ・イネ科牧草のように葉の立っているものは、1m2当り6?10m2の葉面積が光合成による生産量を最大にするといわれる。芝は植栽面積に対して10倍の葉面積をもっても光合成は活発に行われマイナスにはならないとされ、したがって他の草より密度濃くコンパクトに圧縮した人工群落一一芝生を造るのに最適で、さらに適度の刈込みによって、芝生をよい状態に維持することができる。芝生用植物は前記イネ科の植物群で代表されるが、特殊の場合クローバー類・リュウノヒゲ・ディコンドラ等も包含される。「芝生植物」ともいう。 |