意味 |
自然のままの石を美しく 組み合わせて庭の骨格ないし主要部分の景を構成すること。その庭の景趣を強調し、自然を模した具象・抽象的な構成は、優れた日本庭園の技法の一つである。石組が発展したのは、日本人の古くから自然石の不変性に対する神秘感、宗教の寓意的手段、形態が造形的に優れたものであるという認識などが背景にあると思われる。石組に関する類似語に「畳む」、「立てる」、「打つ」、「添える」があり、石組の種類には、宗教など寓話を表現するもの、自然の趣を示すもの、実用を主とするものなどに分けられる。上古に神の憑代(つきしろ)として磐座(いわくら)・磐境(いわさか)、仏教や道教の伝来と共に仏世界を示す須弥山(しゅみせん)石組、仙人の棲(す)むめでたい蓬莱山や蓬莱石組、仏像の三尊脇待(きょうじ)形式を模した三尊石組、神仙の棲家という洞窟状石組、長寿を祝う鶴・亀石組、宝舟の夜泊石組、子孫繁栄を願う陰陽石組、吉祥数の七五三石組などがそれである。また、美しい山水の景観を造るため滝石組、流れ石組、築山石組、岩島石組、遠山石組、石の勢いを利用した配石群、実用的な護岸石組、野面(のづら)石積組など趣があるように造られている。石組の組み方は自然観察に学んだ構成要素が中心となり、石の持つ形態・色調・節理などの特性を最大限に生かすことが求められる。施工にあたっては、まず石錆び・地衣類・草木実生などの付着物を十分養生したのち搬入し、各々の石を用途別に分類、施工箇所の地盤を調査して軟弱地盤には杭打ち等の基礎工法を施しておく。次に設計図に基づいて骨組となる主要部分、次いで副次部分を定め、その各々に、まず主石、次いで副(そえ)石、しかる後にその周辺の順に配石する。すなわち要(かなめ)に当たる石で大切な所を押さえてから全体との調和釣合を図りつつ布石するということである。石組を構成する石には立石・伏石・横石の別があり、その姿態は千差万別であるから各々の石の特性を事前に把握しておく必要がある。垂直石には荘厳さや上昇力が、斜立する石には引力に抗する方向に躍動感を、平らな石には安定感が、丸石には穏健、角石には豪健などの勢いが感じられる。作業には「おこす」、「たおす」、「ねかす」、「ふかす」、「ふりかえる」、「沈める」、「入れる」などの用語が用いられ、石の根入れ深く、必要に応じて飼石を行いかみ合せを十分に行う。クレーン等の機械を用いるときは石を傷つけぬよう注意し、操作の安全管理に万全を期さなければならない。現代の石組はこれら伝統的な手法の粋を現代感覚に置き換え、その造形の重要な手段として新たに認識されている。また、その作庭意図を最もよく後世に伝える部分であるだけに熟練を要する技法の一つであるといえよう。「岩組」ともいう。 |